■没後50年を迎えて・江戸川乱歩伊賀を語る
7月28日は名張生まれの探偵作家、江戸川乱歩の50回目の命日であった。世を去って50年ともなればたいていの小説家は忘れられてしまうものだが、乱歩だけはいまだに人気作家で、作品の出版や雑誌の特集、映画化、舞台化、アニメ化などが相次いでいる。いっぽう乱歩生誕地の名張市は、財政難がいよいよ深刻化、とても乱歩どころの騒ぎではない。
下には乱歩が残した随筆から、名張市や伊賀市に関する記述を抜粋した。赤字は随筆のタイトル、カッコ内は初出紙誌。乱歩はこうした文章で伊賀地域のことを、いまの言葉でいえば情報発信してくれていたのである。なお、没後50年を記念して「伊和新聞」に「乱歩と名張」を連載中である。謹んでご購読をお願い申しあげる次第。(雄鶏屋ほんだわら)
ふるさと発見記 私の本籍は三重県津市にあるが、一度も住んだことがない。祖父の代まで藤堂の藩士で、津市に住んでいたが、父は郷里を離れて、大阪の関西大学を出、しかし、最初の就職は同じ三重県の北部の名賀郡の郡書記で、同郡の名張町に2年ほど住んだ。(「旅」昭和28年1月号)
三重風土記 私が青年時代非常に世話になった政治家川崎克先生が、上野市の人で、名張町もその地盤なのだが、克先生の息、今の改進党の川崎秀二君とはごく親しく、昨年はその依頼で、生れて初めて選挙の応援演説に行き、名張町でも話をした。(「小説新潮」昭和28年5月号)
生誕碑除幕式 碑の裏面に私の好きな句を入れたいということで、それを書いて送った。句の方は、このごろ色紙を出されると、よく書くことにしている「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」という言葉にした。(「宝石」昭和31年1月号)
ふるさとの記 名張の町そのものも美しい。四方を遠山に囲まれて、昔ながらの城下町の風情があり、京都風の丹塗り格子の町屋も残っているし、町を歩いていて古風な「杉の丸」の造り酒屋の看板に出会ったのも懐しい。(「真珠」昭和31年7月号)
古城にうたう 三重県上野市を囲む緑の丘に、空高く聳える白鳳城。関西線の車窓からの遠望も実に美しい。この白鳳城、古城を忠実に模してはいるが、真の古城ではない。前厚生大臣川崎秀二君の厳父、政治家川崎克先生が、昭和十年、独力で建造せられたものだ。(「週刊読売」昭和31年9月16日号)
名張あれこれ 思い出してみると、この数年間に、名張市にもいろいろなことがあった。一番大きな出来事は、大出水の被害であろう。あのとき北田市長さんが、主務官庁へ陳情のため上京せられたので、私はホテルにお訪ねして、被害の様子を詳しく伺ったが、前記の私が知っている方々は大部分被害者でたいへんな御苦労だったことと思う。(「伊和新聞」昭和36年1月1日号)
赤目四十八滝 紅葉のころで、満目の錦の中を、四十八も滝のある曲りくねった渓谷を、流れに沿って登って行く。あるときは堂々と空に懸る瀑布となり、あるときは瀬を早めてうずまく急湍となり、それが二本となり、三本と分かれ、落ちると見るや、たちまち別の滝となってしぶき、泡立ち、湧き返える。(「グラフNHK」昭和38年8月号)
乱歩と名張 略年表
1894/明治27年 10月21日、名張町新町で誕生。本名、平井太郎。父親の繁男は前年から名張郡役所に書記として勤務、新町の借家に住み、津で独居していた母親わさ(乱歩の祖母)と同居、同じく津から妻きく(乱歩の母親)を迎えていた。
1895/明治28年_ 繁男が鈴鹿郡役所に転勤となり、一家4人は亀山町に転居した。
1952/昭和27年 9月26日、学生時代から世話になっていた川崎克の次男秀二の衆議院議員選挙応援のため名張町を訪れ、平尾の宇流冨志禰神社で演説。夜は鍛冶町の清風亭で町内の有力者と歓談し、宿泊。翌日、本町で書店を営んでいた岡村繁次郎らに案内され、生家跡に初めて足を運んだ。生家跡は桝田医院の中庭になっていた。
1955/昭和30年 11月3日、桝田医院中庭に建立された生誕地碑の除幕式に妻隆子と出席。四日は名張高校など市内四会場で講演し、5日は香落渓を見物。生誕地碑は59年の伊勢湾台風で被災したのを機に、路地を隔てた桝田医院入院病棟(本町)に移転。
1965/昭和40年 7月28日、脳出血のため池袋の自宅で死去。満70歳。8月1日、青山葬儀所で日本推理作家協会葬が営まれ、約1,200人が会葬。名張市からは北田藤太郎市長と岡村繁次郎が参列した。
1987/昭和62年 7月3日、名張市立図書館が丸之内から桜ヶ丘に新築移転し、館内に乱歩コーナーを開設。
2009/平成21年 2月28日、桝田医院入院病棟跡に整備された乱歩生誕地碑広場の完成記念式。
2013/平成25年 4月7日、名張ロータリークラブが近鉄名張駅前に銅像を建立し、除幕式を営む。
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【名張商工会議所/電話0595・63・0080】 |
近鉄名張駅東口駅前の江戸川乱歩像。名張ロータリークラブが創立五十周年を記念して建立した。改札を出ると、ベレー帽をかぶり、本を手にした晩年の乱歩が迎えてくれる
江戸川乱歩生誕地碑
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