■■ 1月1日(祝) ■■

 
■謹賀新年
新年あけましておめでとうございます。
すっかりおなじみになった写団なばり代表、松田賢治さん(名張市新町)の新春写真展。一月一日付伊和新聞の「ふるさとなばり四季10景」では、ふるさとが見せるさまざまな表情を鮮やかなカラー印刷でお楽しみいただけます。
大正15年に誕生した伊和新聞は今年が創刊93年目。毎週土曜発行で、定期購読料は一か月650円です(送料別)。お申し込みは伊和新聞社(電話0595・63・2355)へどうぞ。  伊和ジャーナルと伊和新聞を、本年もよろしくお願いします。

■いが再発見
毎回好評を得ている伊和新聞で掲載の「いが再発見」企画。第1回目の「牛汁」を皮切りに忍者、お水取り、おけら詣り…など、多彩な読みものが登場した。その中から、名張・西田原にある弥勒寺を紹介する。
重要文化財の仏像とツーショットで写真が撮れる寺がある。名張・西田原にある弥勒寺で、仏像マニアにとってはよく知られた寺だと聞いた。本堂にある仏像は、そば近くまで寄って拝観できるし、写真撮影も自由。2人で行けば、貴重な仏像と並んで記念写真を撮ってもらうこともできるというのだ。しかし、奈良に住んでいる私にはあり得ない思いがする。国宝・重文級の仏像は撮影禁止の立て札か、「これ以上仏像に近づかないでください」と書いたはり紙しか頭に浮かんでこない。実際はどうなっているのか、弥勒寺を訪ねてみた。


弥勒寺本堂

国宝・重文級の仏像と並んで記念撮影
この日はちょうど、東大阪市の歴史を勉強する会のグループ30人が、弥勒寺を訪れる日だった。岩本善雅(ぜんが)住職(65)からまず、寺の歴史、本尊の薬師如来や弥勒菩薩の説明がある。その後、写真は自由にとってもらっていい、仏像にも近寄って拝観してほしいとのお許しが出る。各自、自由拝観が始まる。本堂には12体の仏像があるが、人気のあるのは重文の木造聖観音立像と十一面観音像。それに本尊である薬師如来と寺名ともなっている弥勒菩薩の4体だ。特に聖観音と十一面観音像の前は人だかりがしている。スマホを向けて写真を撮る人、仏像に近づいてじっくりながめる人、十一面観音と並んでツーショットでポーズをとる人と忙しい。にぎやかだ。これを見て、自由に写真が撮れるのはほんとうだと納得した。


聖観音と並んだ家里英夫総代表


本尊・薬師如来像を説明する岩本住職

弥勒寺は聖武天皇の時代、736年(天平8)に円了上人によって創建、その後、東大寺の良弁杉で知られる良弁上人が大伽藍(がらん)を建立するなど隆盛を極めたが、その後、荒廃したという。戦後、寺は荒れ放題だった、と現在、弥勒寺の総代長の家里英夫(いえさと・ひでお)さん(71)はいう。
「この本堂は1979年(昭和54)に鉄筋コンクリートで改築したものですが、それまではカヤぶき屋根。雨もりはするしたいへんでした。聖観音、十一面観音は大正時代に旧国宝に指定。戦後に重文に再指定されたのですが、その仏像も当時、床の下に置かれたりして受難の歴史でした」
また、狭い名張の地域に多くの貴重な仏像が残ったのには理由があるというのだ。
「織田信長が伊賀を攻めた天正伊賀の乱に関係があるはずです。信長は神社仏閣を焼き尽くしたのですが、われらの先祖は仏像が焼かれるのを恐れて、山などに隠して仏像を守った、と聞いています。また奈良県との境にある毛原廃寺から移された仏像もあるのでは、という説もあります。とにかくこんなに立派な仏像があるのは名張ではここだけ。地元・名張の人もあまり知らないのではないですか」
奈良や京都の観光寺院と違い田舎(名張)の寺は維持するのがむずかしいというのも家里さんだ。檀家は90軒だけ。少子高齢化などで檀家の先細りは目に見えているから、寺の経営では、先々のことを見通すことが必要だという。そこで考えたのがたくさんの人に仏像を見てもらい、拝観料を得て、寺を維持することだ。そのためには、大切な仏像だが、身近で拝観してもらい、写真を撮ってもらう。それがツーショット写真になったのである。もちろん檀家の了解を得てのことだが、これが仏像ファンには受けた。評判が評判を呼び、参拝者は目に見えて増えていった。「いまでは年間3000人ほど来てもらっています。こんなに拝観者が多い寺は名張ではここだけと違いますか」と家里さん。
ただ、貴重な文化財だから、管理には万全を期している。「寺は年中無休ですが、防犯カメラはもちろん設置、だれかが毎日常駐して拝観者に対応しています」
忙しい岩本住職に代わって、5年前から毎日のように拝観者と応対しているのが杉尾佳代さんだ。これまでの拝観者の中から記憶に残っている人たちを挙げてもらう。
「沖縄から来られた夫婦でしたが、十一面観音ばかりを見るために全国を回っていると。これまで四国から青森まで何百体もの十一面観音を見てきたとおっしゃっていました」
4時間以上も仏像と対面していた女性もいた。悩みがあったのだろうか、杉尾さんはいろいろ話を聞いてあげたという。


十一面観音像とツーショット撮影する拝観者

時には研究者も訪れる。「奈良国立博物館に勤めていたかたでした。何か書くものを、といわれてインクペンを出すと、汚れるからと鉛筆にされました。仏像について1時間半ほど解説してもらい、分かりやすかった。それも教えてやるという上から目線でなかったのもよかったです。ためになりました。大学の先生も来られますよ。ここは仏像の宝庫や、といわれて。仏像がそばで見られていいと喜ばれます」。
若い女の子から親しく声を掛けられて驚くこともあると、杉尾さん。「大阪からきた若い子でした。いまどきの風というか、現代っ子でしたよ。本堂に2〜3時間はいたのかなあ、そのうち私(杉尾)に向かって、佳代ちゃん、ここ掃除たいへんやろ。いつでも電話して。手伝いにくるわって」。


弥勒菩薩を撮影する拝観者

話を聞いていると、ただ仏像を鑑賞にくる人ばかりでなく、悩みを抱えた人や癒(いや)しを求めてやってくる人もいるのでは、と思ったのである。 弥勒寺を出てから国宝や重文の仏像の多い奈良県ではどうなっているのか気になったので、奈良県の文化財保存課に電話して聞いてみる。担当者によると、奈良県で自由に写真が撮れる仏像は東大寺の大仏と飛鳥寺の大仏だけ。それ以外で国宝・重文級の仏像の写真が撮れるというのは思いつかない、との返事だった。もっとも、それは最終的には仏像の所有者の問題。それ以上はとやかく言えないでしょう、とのことでもあった。

■イガデハク・全国から約12000点
手づくり工芸作家たちが集う見本市「イガデハク」(社会をデザインするネットワーク主催)が昨年の秋、伊賀市ゆめが丘のゆめドームうえので3日間にわたり開催された。全国からアート・クラフト・手作り工芸作家ら約115組が約1万2000点を出展、成功裏に幕を閉じた。
手づくり工芸作家見本市
新たに伊賀市や名張市を中心に活躍しているアーティストによるライブペイントスペース「伊賀魂(いがだま)」を新設、人気を呼んだ。販売スペースでは作家らが直接対応し、作品への思いを来場者に伝えた。体験交流スペース「いがコミ!」や、ゆるキャラ「いが☆グリオ」が登場、会場を大いに盛り上げた。
実行委員代表理事の下猶(しもなお)茂樹さんは、「今後はイガデハクの分身であるマーケットの極伊(ごくい)や寄り添いをテーマにした山の学校とも幅広く盛り上げていきたい」と抱負を語った。
15周年を迎え、ますます人気も上昇、好評だったイガデハク。携わった関係者の努力は計り知れないものがある。イベントに出店した作家達の声を聞いた。
 


「商品の見せ方など、同じ出展者から刺激をもらえる。あれも作ってみようとチャレンジする気持ちになる」と話すのは、手作りアクセサリー作家の前山智子さん(伊賀市・33)だ。来客者と直接会って話せるのが魅力という。「子どもを産んだので、出展時に気軽に助け合える環境があればなおうれしい」と。
ブースにはシンプルで日常使いができるアイテムから、本物の虫の羽根を使ったブローチ、さらに子どもの描いた絵のピアスなど、個性的な品が並ぶ。屋号の「テチョコプラネット」は自身のニックネーム「テチョコ」と「プラネット」からつけたもの。
アクセサリーや花のアレンジ装飾品を出展した「Sweetbin」の佐藤志穂さん(名張市・40代)は「自分の作品作りのモチベーションアップにつながっている。何年も出店しているので、愛着もあり、今後もずっと続いてほしい」と。自身の四季折々のフラワーデザインがホテルで展示されるなど、満足そうに笑顔で語った。
吊(つ)るし雛や小銭入れなど、思わずほほ笑んでしまう温かみのある作品が魅力の「アトリエキャンディ」も出展。キルト指導員の國井(くにい)文子さん(伊賀市・50代)は「毎年、新しい取り組みがあって楽しい。ここでしか販売していないので作品を求めて来る人もいる。出展することで今の流行なども知り、新しいつながりができる。教室を知ってもらうきっかけにもなる」と話した。作品はどれも繊細で丁寧。手作りのかばんも細部に工夫が凝らされており、この日を目当てに訪れるリピーターも多いという。
下猶茂樹実行委員代表理事は「作品を自分の分身と考える作家の作品をを中心に出展している。思いのつまった素晴らしい作品を大切に扱いたい」と話し「展示することで多くのお客さんに見てもらえる。それが、三重でやっている伊賀のイベント・イガデハクです」ときっぱりいい切る。そして「このイベントを社会への提案としてやっていきたい」と。
そして下猶さんは、「興味があれば門戸はいつも開いている。イベントへのボランティアスタッフ参加も可能。みなさん今後ともご協力お願いします」と話した。イガデハクへ行ったことのない人はまず会場へ訪れてみてはいかがだろうか。今年もきっと新しい何かに出会えるはずだ。


※写真は「TchocoPlanet(テチョコプラネット)」さん。名張の「つぐみcafe」でも作品を販売中。

■松田賢治新春展

春を謳う 名張大橋詰、雨上がりの一本さくら、霧を添えて。南町


清流に舞う 蒸し暑い梅雨時、今年もホタルが沢山舞った。下比奈知


秋の風物詩 今年も無事酒米が収穫、美味しい銘酒が待たれる。夏見

墓園落日 奈良県境の茶臼山に沈む夕日、茜色に染まる。桔梗が丘


厳冬大日滝 赤目四十八滝、今年も凍結。赤目/大日滝


白い装い 名張川と新町の街並み、雪化粧の朝。新町河原