■■ 3月2日(土) ■■

 
■伊賀再発見 No61 梅林守る月ヶ瀬の志
忘れてはいない田中善助翁の「恩」
立春も過ぎて梅がほころび始めた。観梅といえば伊賀市と接する奈良・月ヶ瀬梅渓(ばいけい)があまりに有名だ。2月17日から始まった「梅まつり」(〜3月31日)には、各地から20万人の観光客が訪れるが、かつて幕末から明治にかけて「梅の時期は東京の有名人はほとんど月ヶ瀬に行く」といわれるほど圧倒的人気を誇った。だが、工業化に押され、梅林は伐採され、美しい自然が失われようとする。その天下第一の梅林を守ろうと「月瀬保勝会」を設立、日本で初めて自然環境保全を訴えた人物がいた。伊賀上野の実業家、田中善助氏(1858〜1946)だ。その恩を地元・月ヶ瀬の人たちは今でも忘れてはいない。(小谷虎彦)
東正彦館長
伊賀市から南西に約12キロ、月ヶ瀬橋を渡ったところに「月ヶ瀬梅の資料館」がある。2005年(平成17)に設立。梅林の育成と管理を行う場所となっている。東(あずま)正彦館長(64)にまず月ヶ瀬梅林の歴史をきいてみる。「ここは昔、ただの梅林ではなく渓谷沿いに梅が植わっていた。梅渓とよばれるのも、そこからきています」
確かにパンフレットには「月ヶ瀬梅渓」と書いてある。昔見た南画家、富岡鉄斎の絵には川のほとりに梅林が広がっていた記憶がある。海抜200〜300メートル、大和高原の東にある月ヶ瀬地区。名張川(五月川)を削り取ったV字渓谷美と紅白梅の取り合わせ。それをさらに有名にしたのが、藤堂藩の儒者、斎藤拙堂の表した著作「月瀬記勝」。今でいう月ヶ瀬のガイドブックだ。これがバカ売れし、月ヶ瀬はいちやく全国区に。さらに幕末の漢詩人、頼山陽も得意の漢詩で紹介。その名声にあこがれて有名人がわれもわれもと押しかけ、月ヶ瀬はだれもが知る名所となったのである。
高山ダム
その景観が大きく変わったのは戦後。1969年(昭44)に高山ダムできたことにより、月ヶ瀬梅渓の大半が水没。月ヶ瀬湖となり景観は様変わりする。住民は3800本の梅樹を移植し景観の再生に努め、ようやくダムと折り合いをつけた風景を作り出すことに成功する。
記者がこの月ヶ瀬にきたのは初めて。昔見た絵の記憶があり、桃源郷のような風景をイメージしていたが、現実は違った。違和感をもつのも当たり前だった。私の予想した風景は実はこのダムの底に眠っているのである。
しばらくすると東館長が別室から何やら黒いものを持ってきた。直径2センチほどの実である。「これは烏梅(うばい)とよばれるもの。ウメを燻(くん)製にしてシワシワになるまで乾燥させた。・・・ 続きは2月9日号の伊和新聞に掲載しています。※ご購読は名張市上八町1482 伊和新聞社 電話63局2355まで。定価月650円(郵送地区別途)、一部170円。

■桜井市場〜んグルメフェス
ここでしか味わえないうまいもん大集合――。奈良県桜井市の桜井商工会青年部は、地元にちなんだ食材を使用したグルメを食べつくそうと3月24日、第4回桜井市場〜ん(いちばん)グルメフェスを三輪の芝運動公園内で開催する。入場無料。場内は禁煙。
会場では焼き鳥やミートパスタパン、チキン南蛮など30店舗が自慢の味を提供する。物産展では田原本町、山添村、三宅町、宇陀など近郊の町村のブースも設営する。
イベントも多彩。書家もーちゃん氏、キャッチダンス・スタジオ、さくらい歌垣舞楽団「和の〜と」がゲスト出演。総合司会は桜井市出身のABCアナウンサー・岩本計介氏。午後4時から10万円の旅行券ほか豪華景品が当たる大抽選会。 問い合わせは桜井商工会、電話0744(43)0131まで。

■エネルギーと地球温暖化・平成に入り平均気温上昇
NHK名古屋放送局で夕方のニュース情報番組の気象キャスターを担当する寺尾直樹さんの「エネルギーと地球温暖化」講演会が2月17日、名張市民センター(上八町)であり、参加したまちづくり協議会らの役員約100人が環境問題について考えた=写真。21世紀のエネルギーを考える会・みえが協力した。
気象観測について寺尾さんは、「アメダスは名張にはないが、降水量は調べることができる」と話し、「伊賀市上野を中心とした月平均気温は平成に入り高くなっている。昨年は13日も熱帯夜が続いた。大都市ほど気温が上昇しているが、都市化が少ない場所も同じで、猛暑日が多くなっている」と述べた。
続いて海水温や上空の気温を地球規模で説明、「これまで快適だったCO2などの温室効果ガスの数値が上昇してきた。熱の吸収過剰で地球の温度が上がる地球温暖化が始まっている」と警鐘を鳴らした。そして、都市部の気温が周囲に比べ異常な高温を示すヒートアイランド化について、「これが気象災害を増加させる要因」と述べた。 地球温暖化やヒートアイランド化を止めるには、再生可能エネルギーの導入を拡大させることが不可欠として、「太陽光や水力、風力、バイオマス、地熱などを利活用すべきだ」と話した。


月ヶ瀬の歴史を教えてくれた東館長


「月ヶ瀬資料館」の前に建つ田中善助翁顕彰碑


紅花染めの媒洗剤として使われたウメを燻製にした烏梅


気象キャスター・寺尾直樹さん講演