▼ぴーぷるステーション【NO.19】

花瀬川沿いの稲田で苗代作りに汗を流す・川口庄治さん(77)

■早い田植え収量も良し
 「町の衆は、名張で一番早いのは美旗新田と思ってるようやなあ。でも田植えがホンマに早いのはこの広芝谷の水田一帯や。20日前後には、気の早い百姓が田植えを始めるやろ。うちも24、25日が予定日や」
 名張の南郊、下比奈知の山手、神屋から下比奈知間を流れる花瀬川沿いの稲田で、苗代作りに汗を流す川口庄治さん(下比奈知、77)は、一服をとり、60年にもなる長い農家の悲喜こもごもを話してくれた。
 なぜ、それほど田植えが早いのか。「この谷田は四方が山。日照時間が短いので、昔から田植えはどこより早かった。昔は5月24日前後が一番ええと言われたが、今は1か月も早くなってしもた。米作りは適地適作が大事だが、村人たちは長い経験で、4月下旬の方が、品質も収量も良いという考えが身についてしもた。反収は平均7・5俵程度。若衆は百姓離れの傾向が強いから、年老いても米作りはワシらが戦力だわさ」と、表情はいかにも楽しそう。
 早植えの方が害虫の発生が少なく、収穫も早いので、台風シーズンの稲の倒伐被害も少ないとも。一番の悩みは、「山の雑木が減ったのでサル、イノシシ、シカによる食害が増えたことだ」と話す。
 「休耕は田が死ぬからだめ。農家は昔並みの重労働は無用になった。春は気分いいよ」と。

TOP戻る