▼ぴーぷるステーション【NO.74】

但馬杜氏・中村貢さん(74)

■情熱燃やす後継者育成
 「身の引き締まる思いがします。自分一人の力でもらったのではなく、皆さんの代わりに頂いたのです。酒造界の地盤が上がるよう、微力ながらご恩返しをしたい」。
 厚生労働省の「卓越した技能者」(現代の名工)に選ばれた酒造り一筋、但馬杜氏の中村貢さん(74)は、一九八六(昭和61)年に青山町の若戎酒造会社にスカウトされて、後継者の育成にも情熱を燃やしている。
 中村さんが杜氏の資格を取ったのは26歳のとき。醸造研究所の講習に出かけたり、大阪国税局管内の「酒造り大学」で学ぶなど、蔵元から認められるまで並大抵の努力ではなかった。特に、酵母研究でも定評があり「今、手元に50種ほどあります。これらの酵母をいくつか使うことで個性的で、おいしい酒ができます」という。
 今年も、21日に新酒の初搾りを済ませ、ホッと一息ついたばかり。「この瞬間は緊張しますが、まろやかな味・香りに仕上がりました」。晴れ晴れとした表情を見せる。
 最近、若い人があまり酒をたしまなくなったと言われている。中村さんは「この傾向も酒の良し悪しではなく、ワインブームのようにムードで動いています。それだけに良い酒は、長いスパーンでじわじわと努力して造れば必ず認められます。本物志向を忘れないことですね」と、道を貫く人には説得力がある。

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