▼ひと【NO.8】
なばり赤目・梅の会 会長       深山なお子さん

■梅林運営に理解を
 なばり赤目・梅の会(米山芳久会長)の事務局として活躍するのは、深山なお子(桔梗が丘5)さん。
  赤目町長坂では、40年ほど前の減反政策によって、休耕田になった土地を利用し梅を植える、梅組合が立ち上げられた。最盛期は1000本近い梅が植えられていたという。しかし、徐々に梅が売れなくなってきたことや、高齢化、後継者問題で、今から約10年前、組合は解散へ。
  この事実を知った深山さんは、「観光地、赤目四十八滝の入り口である美しい梅林風景をなくしてしまってはいけない」との思いで、名張市に相談。地元の福本さんの梅林を紹介され、梅の会設立。交渉へ赴いた。「忘れもしません。5年前の2月25日。梅の会を立ち上げませんかと話に行って、即立ち上げが決まり、3月にはイベントをしました。びっくりするぐらい、素早かったですね(笑)」。同会は、1年目にして100人超の会員を集めるまでになった。
  会を立ち上げた年の夏のことだ。かねてから、「(川の)下流から上流に来てもらう活動をしたかった」という深山さんは、「上流の人たちが、山や川を守ることで下流も成り立っている…ということを、もっと都会の人にわかってもらいたい」との思いで、大阪へ。知り合いを頼って交渉を進め、淀川区(大阪)のイベントに、なばり赤目・梅の会の一員として参加できることになった。会場では、名張のポスターを張り、メンバーが忍者の衣装を着けてアピール。「手応えがあった」と。1年目の秋にして、目標だった大阪への啓発活動につながった。
  翌年2月、大阪YWCAから「厚生労働省の委託で、残留孤児支援事業として、梅林で彼らを受け入れてほしい」との要請を受けた。日本に古里を持たない中国帰国者たちが、毎年顔を合わせ、和気あいあいと集える「心のふるさと」づくりの協力だった。
  以来毎年、彼らは観光バスで赤目に梅採りに訪れている。この受け入れを始めて2年目から、中国帰国者たちだけで、年間100人以上が梅林に足を運ぶようになったという。
  現在、梅木は約300本。5年間、活発に活動をしてきたが、「今年は思わぬ事態になった。不作。梅が足りない」。
  そこで、深山さんらは会議を重ね、来年から会費を無料にすることを決めた。今まで、梅の会では、梅林の手入れにかかる費用は、会員からの年会費で賄っていた。会員たちは、その分、梅を摘んで持ち帰ることができるというシステム。しかし、今年のように不作だと、会員が十分に持ち帰るだけの梅がない。会の運営を考えると、苦汁の選択だった。「下草刈りだけでも年間十万円以上はかかるんです」。
  しかし今、深山さんは発想を転換。大きなイベントで単発的に人を集めるのではなく、日常的に梅林に足を運んでもらうことが大切だ…と思うようになった。誰でも、ふらっと立ち寄って山菜や梅を摘むことができる開放された美しい梅林にする−。
  「来年から先、梅林の手入れにかかる費用を考えると不安はありますが…。市内では、リタイアされる男性が増えると思います。もし、時間があれば、是非、梅林を見がてら、手伝いに来てほしい…」と、声をかけている。

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