▼ひと【NO.3】
自分で選択する時代  〜堀尾正明さん

■エグゼクティブアナウンサー
 4日、突然のNHK退職を発表し、去就に注目が集まる、堀尾正明エグゼクティブアナウンサー(52)。その2日前には名張市を訪れ、名張産業振興センターアスピアで、講演会を行った。テーマは「ご近所パワーで地域(名張)を変える」。
 堀尾さんは、昭和56年にNHK入局。「難問解決!ご近所の底力」「にっぽんの底力、いよっ日本一!」「地域発!どうする日本」などの番組を担当。2007年度のNHK「地域応援キャンペーン」を統括していた立場で、今期キャンペーン終了とともに退職。
 講演会開催は、「名張の方から、名張を元気にしてくださいと、直接手紙をいただいたので実現した」というが、講演会冒頭、番組のファンでもあった亀井市長は、「よもや来てくれるとは思わなかった」と、あいさつ。
 「難問解決!ご近所の底力」は、今年で5年目。身近な困りごとに悩む町が、全国各地の妙案による取り組みを参考に、自分たちの手で解決していくという、視聴者参加番組で、NHK「地域応援キャンペーン」の一環。地域間格差が広がり、東京一極集中に批判が集まる中、地方が抱えている問題に真剣に向き合うことをテーマに展開されている。堀尾さん自身は、「昭和20年代から30年代の向こう3軒両隣の、あの古き良き日本を取り戻そうというコンセプトの番組です。この番組ほど、視聴者の皆さんにテレビ番組が役に立っていると実感した番組はない」と実感している。
 幼少期を長屋で過ごした堀尾さんは、「母親が仕事をしていたので、学校から帰ると、近所のおばちゃんが、誰かしら家にいて、迎えてくれた。怖いおばちゃんがいて、よく叱(しか)られましたね。鍵やプライバシーのない生活だったが、安心安全な時代だった。でも、その時はやっぱり、あのおばちゃんが来ないような家に住みたいなんて思ったもんでした。それから、高度成長期を迎え、しがらみのない町が欲しかった日本人は、欧米化にあこがれ、一生懸命プライバシーを守る生活を作った。そして平成になって、ふと気が付いてみると、しがらみはなくなったが、大切な大切なつながりも切れてしまっていた。あの古き良き日本の逆の状態ですね。隣に住んでいる人の顔も知らない。町全体で対処しなければならない問題が山積しているにもかかわらず、顔さえ知らない状態で、力を合わせようにも、合わせようがないようになってしまった」と自身の思い出を交え、軽妙に解説。
 現在の日本について、「高度成長が決定的に望めないのは、やはり人口が減っているから。歴史上は、おととしが日本列島に一番人口がいた。これからはどんどん減っていく。ということは、税収が減ります。そして昔は、国がしてくれたことが、今、地方は地方で頑張ってくださいとなった。行政サービスに期待していてはいけない。では、どうしたらいいか。そのヒントを与えるのがこの番組。うちにもできるかもしれない、という妙案を紹介しているので、アレンジして利用していただいたらいいと思います」と言う。また、会場の参加者たちに向かって、「現状をしっかり見て、どういう名張市が一番いいのかということを自分たちで考えなくてはならない。自分たちで選択する時代だと思います」とアドバイスを。
  さらに堀尾さんは、さまざまな地域の取り組みを見てきた経験から、「リーダーの志を高く、さまざまな年代の人を巻き込むことが成功の秘けつ。ぜひ、住民運動の火種を、みなさんの力で大きくし、ご近所を一つの行政にしてしまうようなまちづくりをしてください」と締めくくった。

 

 


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