■初めてのリサイタル
名張市桔梗が丘在住の85歳の富田冨美さん(桔梗が丘2番町)が3日、桔梗が丘ルーテル教会で生まれて初めてのリサイタルを開き、張りのあるソプラノの美声を披露。花嫁人形、ラメール、ナポリよさらば、アベマリア、平城山など12曲を歌い、会場いっぱいに溢れた聴衆を感動させた。
冨美さんは大正14年生まれの85歳。大学教授の夫と死別、日展入選の経歴ある書家で書道の指導をしている。歌のことは忘れていたが、「おきつも女声合唱団」に入団、同団代表で指揮者の藤原保信さんが、「年に似合わず声がみずみずしい」と評価、藤原氏が特別のレッスンをしていた。
これを知った書道の弟子たちが、リサイタルを開くことをすすめた。藤原氏も賛同、特別出演をして、当日は「鉾をおさめて」など3曲を高らかにうたい、聴衆を魅了した。そして、しめくくりに富美さんと「ホフマンの舟歌」をデユエットした。
10代のころは声楽家になるのが夢だったが、両親に反対され断念。京都女子専門学校(現、京都女子大)に進学、中国文学を専攻し書や漢籍に明るい。京都にいたおかげで原爆の被災も免れたが、同級生には犠牲者もいた。
公演が終わって冨美さんは「このたびは予期しない催しになりありがとうございました。大切な場所がお借りできて感謝します。歌は長い間忘れていました。私が、歌を歌うことは家族は知らなかったようです。今回のことを嫁に話すと『お母さんすてき』と言ってくれました」と喜びを話した。
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