▼ひと【NO.7】
JA伊賀南部代表理事組合長 辻村和郎さん

■地域貢献が一番
伊賀南部農業協同組合前代表理事組合長・井上延郎氏の急逝に伴って7月31日、新しく代表理事組合長に就任した辻村和郎氏(62)。精悍(せいかん)な顔から経営者としての情熱が伝わってきた。
JA伊賀南部は、平成13年4月に名張信用農協、青山町農協と伊賀名張農協が合併して誕生。その当時、管内に13金融店舗があったが、経営の悪化を受けて、平成19年6月3店舗集約。組合員からは遠くて不便になったと不満も聞かれたが、「健全経営が成り立つようになった」と開口一番。
貯金高だけでいうと三重県下で15農協ある中の15番目。辻村さんは、「弱小農協なんです。そんな中で店舗を集約しながら、なんとか経営を立て直した。自分で言うのもなんなんですが、前の井上組合長をはじめ、われわれが頑張った成果かなと思っています。組合員さんにはご迷惑をかけました」とふりかえる。また、「出資金を預かっているのが約8億円あります。農協が倒産してしまったらえらいことです。やっぱり健全な経営をしていくことが基本。私自身、5年半あまり常務理事として経営を担当して、そこをやかましく言いながら改善してきました。やっと、みなさんに今までかけていた心配もなくなった。これからは何をサービスしていけるか、また、何からやっていこうかなと考えているところ」と話す。
管内の農畜産物は、ブランド力が強い。伊賀米コシヒカリが昨年、(財)日本穀物検定協会による食味ランキングで、東海地域では初の最高評価「特A」を獲得。また、「伊賀牛」は、三重ブランドを取得した。この他に、伊賀山田錦という酒の米も逸品。「おいしい米とおいしい肉とおいしい酒があったら最高でしょう。この3つをうまく利用した何かができないかとずっと考えている」と“左党”らしき発想を持つ。ただ、米も牛も全国的に発信してしまうと数が足りない。そこで、観光とのタイアップを心掛けている。
そんな中、8月6日、名張市希央台に「とれたて名張交流館」が完成した。名張市役所、社会福祉協議会、商工会議所、名張市物産振興会、観光協会とJAの6者で運用、好調なスタートを切ったが、実質の販売はJAが中心。「あそこを名張のいろんな情報を発信していく場所にしていきたい」という辻村さんは強い思いを持つ。「様子が気になるので、今も2日に1度は顔を出している。いつ行っても客足は多いが、農作物の端境期ということで、売り上げは伸び悩んでいる。販売には、もうひと工夫必要だ」と今後も経営の最先頭に立つ構えだ。
さらに「農協は農業者のための組織ですから、農業者が一番ですが、購買品や金融、共済も、地域のみなさんに、どんな貢献ができるのかも考えていかなくてはならないと思っています」。
昨年は地域住民に向かって発信するためのPR冊子を作成、農協の良さをアピールした。地域の理解を求めての戦略だ。「農協のATMはローソンに設置させてもらっていますが、他の金融機関とは違って、どの時間帯でも手数料が無料。でも、そういうメリットも宣伝が下手なんです。もっとうまく発信できないといけない」と力強い発言が飛び出した。「大きなホームセンターと違い、こちらには商品を扱う専門の指導員が多い。万一、人がいなくても、タッチパネル式のコンピュータで病気や害虫などの営農に関する情報が検索ができる。農業をやっていないから利用できないと思ってくれてる方が多いのではないでしょうか。徐々に解決していきたい」と今後の広報活動の重要性を語った。
ほかにも、遊休資産の処分方法を含めた有効活用や後継者不足の解消、職員の育成など、課題は多方面にあるというが、新理事組合長の辻村さんは最後に「経営理念である組合員の負託にこたえ、利用者からの信頼、地域社会への貢献に取り組んでいくということが一番。発信力を強く、みなさんに喜んで利用していただける農協を目指してがんばっていきたい」と熱く話した。

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