▼ひと【NO.4】
県内初の家庭的保育事業 大鷲明子さん

■一人ひとりの成長楽しみ
名張市は昨年8月、待機児童の解消に向けて3歳未満の乳幼児を保育士の自宅などで保育する「家庭的保育事業」を県内で初めて実施した。
「少人数で一人ひとりの成長がみられることが1番の魅力」と話す大鷲明子さん(梅が丘、56)は、市内3か所ある家庭的保育室の中の一つ「マザーランド」(桔梗が丘3)の代表。マザーランドには大鷲さんのほか、補助者2人が交替で勤務、常に2人の保育士で子どもの世話にあたる。現在、預かっている幼児は1歳4か月から2歳2か月までの男女5人。保育時間は、平日午前8時から午後6時まで。
大鷲さんは短大を卒業後、保育士の資格を取得。名張市の保育園に勤め一旦、仕事を離れた。そして、結婚、子育ての後、再度保育の道へ。
学校法人桔梗が丘学園で24年間勤めた。一昨年、年齢的な体力不足を感じ退職を決意。その後、再び市の保育所に勤務したが、そこには大鷲さんの求めていた保育の形はなかった。失意の中、再び退職。しかし、その後すぐに家庭的保育事業の保育士募集の話があり、応募した。
「お母さんたちとの信頼関係もできて、仕事として毎日楽しいし、充実しています。3歳までの小さい子どもの保育は、やっぱりお母さんがベストだけど、それができなかったら、せめて少人数のところで丁寧にみることが必要」と話す大鷲さんは、昨年に続いて今夏も大谷大学(京都市)で保育心理士養成講座を受けた。保育心理士とは子どもや保護者に向き合って、心のケアまでカバーできる保育の専門家だ。
受講して「人間の育ち方」「子どもの目を見て接することの大切さ」「3歳までの育児の重要性」など、発達段階をきちんと踏んでから外の世界に出ていかないといけないということを学んだ。目からウロコが落ちることも多くあったという。
そして、「この子たちが大人になったときにどんな大人になるか…ということまでちゃんと考えないといけないという実感をもって保育しています。その分、責任を感じるし、やりがいがあります」と語る。
待機児童解消だけではなく、家庭的保育士をもっと増やさないといけないという思いは強い。「家庭的保育室は、少人数だからこそお母さんたちとも十分に信頼関係を築けて、相談にのれることも大きな利点」という。一旦仕事をやめ、普通の母親だった時期に感じたことがあったから、共感できることも多い。
また、幼稚園勤務時に、若いお母さんたちの不安や悩みも聞き、母親のケアも必要だということは、ずっと感じてきた。子どもと母親の両方をケアすることで虐待など、「問題のある家庭の一助になれる」ともいう。
大人数の子どもに大人数の保育士を配置して、1人の保育士に対して何人の乳幼児…という頭数の計算をするという話ではない。
しかし、今年度、市の担当者から「将来的に待機児童が減るとなくなる事業」といわれ、予算も削減。「この仕事はボランティアではないし、プロとして当然のこと。相応の報酬がなくて、継続性が保証されていないとなると、家庭的保育室を運営していく人は増えていかない」と憤りを隠せない。
休日には、梅が丘で子育て支援のサークルの活動も行う。また、将来、発達障害児をもつ母親たちの集える場所を作りたいという思いも強くなった。「子どもたちをみることはもちろん、悩んでいるお母さんたちをなんとかしてあげられるような活動をしていきたい」と。

   
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