▼ひと【NO.6】
オブジェ作りに取り組む 豊岡顕典さん

■アイアン家具の存在感に魅了
いすやテーブル、棚などの一部に鉄を使った家具(アイアン家具)が、「独特の風合いと存在感が魅力的」と女性の間で人気だ。
静かなブームの渦中にあるのが、名張市東町にある豊岡溶工株式会社代表取締役の豊岡顕典さん(40)。祖父が始めた豊岡溶工有限会社の3代目として生まれ、3年前に独立。創業者だった祖父に憧れ、溶接の仕事を志し、このほど別に株式会社を立ち上げた。創業の際、祖父がこだわっていた「溶工」という名称を継承したいと、あえて似た社名にしたという。
作品づくりは約10年前から。本業の仕事終了後、独りで作業場に残り、溶接技術を駆使した作品つくりに精を出す。銅板工芸をやっていた祖父とは違い、現場の仕事に近い作品をつくる。制作は図面も何もない状態からだ。作業は夢中になると途中では止めない。「いっ気に最後までいけたものは気に入った作品になります」と話す。
自分のオブジェとして始めた作品だが、「ほしい」という要望もあり、近々、インターネット上の楽天に店舗をオープンする予定。店名は「ZACC IRON(ザックアイアン)」。自身の所属するロックバンド名「ZACC」からのネーミング。バンド活動は19歳から。ギターとボーカルを担当している。多忙のため音楽活動はままならないが、「ZACC」という名前にはこだわり、ロゴやキャラクターも制作している。
夢中になれば、外界とは遮断したくなる性格で、「つくっているときは、誰にも話しかけられたくない」という。
作品の売買には頓着しない。形になって出来上がった瞬間が一番楽しい。「初めは今までどこにもないものをつくろうと思ったんですが、探してみると結局、世の中には似たものがある。それを考えずに思ったものを形にしようと思った」と自己流のオリジナル作品にこだわる。
作品コンクールへの出展話もあった。しかし、「誰かに評価してほしくないという思いがあっての出品は考えられない」と謙虚だ。「たまたま目に入って、良いと思ってくれた人のためにつくりたい。そして、お客さんの意向に沿ったものを形にしてあげたいと思っています」。
将来の夢は、本業は従業員に任せ、自分の工房で時間を忘れて作品を作ること。
フェイスブックには「あなたの生活を輝かせる鉄家具ZACC IROへようこそ。鉄を使ったオブジェ・家具のオーダーメイド、通信販売、バイクのカスタマイズ等、お客様のご希望に応じた商品をお届けします」と記す。楽天ではセミオーダーで注文を受ける予定だという。ホームページ制作、値段設定など、まだ仕事が残っているが、作品はそろった。出店が楽しみだ。 「写真はちょっと……」と顔の撮影をやんわり拒否。写真は完成した作品のひとつ。

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