▼ひと【NO.4】
名張育成会理事長 市川知惠子さん

■施設拡充も課題は山積みです
昨年6月、社会福祉法人名張育成会の新理事長に就任した市川知惠子さんは伊賀市出身。大学時代、社会福祉学を勉強し、卒業後、高齢者福祉施設で事務仕事に従事。ところが約40年前、名張育成園(当時)の園長さんと出会い、その意気込みに一目惚れ。現職場に転職した。「初めてここに来たとき、障害が重くて話ができない子や、ぴょんぴょん跳ねているだけの子。でも、みんなキラキラしていて、なんか自分の人生がここで変わるという予感がしました」と振り返る。
知的障害者やその家族からいろいろなことを教えられてきたと感じている。障害児は、気持ちを隠すことが苦手。言葉で伝えられない分、体調や行動に現れる。そこから「どうしてそんな行動をしたのか」や「どうすればよかったのか」など自問自答しながらも、寄り添い、工夫を重ねて支援を続けた。
障害を持っている人の支援をしていると「人間とは何か」とか「人の幸せとは何か」と考える。「本当に彼らからいろんなことを教えてもらいます」としみじみ語る。
子どもが愛され、育つことの大切さは、障害の有無とは無関係だという。「子ども時代は信頼と安心感を培うことが大事なんですね。親バカになれるのは親だけなので、その子が何ができるできないではなく、素朴に子どもをかわいいと思ったらいいんです」とアドバイスする。
安心感が育たないまま大人になり、他人を信頼できず、不安感に苛(さいな)まれ、苦労してきた人をたくさんみてきた。その経験から、約10年前、市に働きかけ、個別乳幼児特別支援事業を始めた。子どもの個別の発達を見ながら無理をさせず、じっくり守りながら育てる事業だ。
他方で、平成5年には、県の委託を受け、豊富な経験を生かした知的障害者の相談窓口を始めた。
これまでは同会の入所施設に入っている障害者や通園者だけのことを考えていたが、相談を受けるに従い、自宅で困っている人がたくさんいることがわかった。「自分のところに通ってくる人だけをみていたのではダメだ」と気付いた。
相談を受け、必要なことに対応するにつれ施設や事業は増えた。「課題は山積みですが、気がついたらこんな風になっちゃったと言う感じですかね」と笑う。
「社会福祉法人なので、さまざまな福祉サービスを行っています。社会問題の中で、わたしたちができることがあればやっていかないといけないと思っています」。新リーダーの重い言葉が返ってきた。
障害福祉サービス、介護保険サービス、児童福祉事業など一見、対象は異なるように見える名張育成会だが、根本は同じ。名張育成会の基本理念「だれもが 人として大切にされ、地域で自分らしく生きるために、私たちはご利用者様はじめ、だれからも信頼される支援を行い、安心して暮らせる地域社会の実現に貢献します」に表されている。

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