▼ひと【NO.1】
年女 橋本優さん

■守りたいクロとの約束
平成27年(2015)9月、娘の慶志子(よしこ)さんと共に動物保護団体「わんらぶ」を立ち上げた橋本優さん(昭和46年生まれ)は、伊賀市を中心に、二人三脚で活動している。飼育放棄や多頭現場にいた犬、さらに野犬(のいぬ)など、現在、自宅で20匹以上の犬を保護中だ。里子に出した犬も多く、今までかかわった犬猫は千匹を超える。
昨年、団体代表が慶志子さんに代わり、動きのある1年だったと振り返る。「日々の活動に追われながらも、保護犬1匹いっぴきと向き合い、心のケアに務めた」と橋本さん。慶志子さんのサポート役として保護犬の心身のケア、躾(しつけ)を中心に仕事をこなしている。
幼少期から内気な性格で、友達と過ごすよりも自然や動物と親しむ方が好きだった。動物保護活動は小学5年生のときから。借家住まいで犬が飼えず、毎日学校帰りに友だちの家の犬に会いに行くのが楽しみだった。
その家に、子犬が生まれた。名前はクロと名付けられた。大きくなったある日、突然、クロがいなくなった。友人の母親に聞くと「保健所で交換会があるから持って行った」という。「あんまりかわいくないし、交換してもらえないのでは」と心配になった橋本さんは「クロを迎えに行きたい」と親に懇願。その日、親は大家さんに掛け合い、自宅で飼育できるようになった。
翌日、学校から帰り、保健所に電話をかけたが「そんな犬はいない」との返事。急いで保健所に行ったが、クロはいなかった。
実は、交換会は嘘(うそ)で、飼育放棄犬として、殺処分されていたのだ。忘れもしない。「午前10時に処分しました」という耳に刺さる言葉。現在の時間は午後2時30分。泣き崩れ、保護活動を心に決めた。そしてクロに「ちゃんと自分で動けるようになったら、私が死ぬまで、百匹でも千匹助ける。生まれ変わって困ったら私のところに来て」と約束した。
最初は、近所で捨てられている子猫を「誰か飼ってくれませんか」という運動から始めた。活動を続けるに従い、大切に育ててもらうための里親選びや、病気予防のワクチン接種の必要性など、自分なりに学んできた。
それ以来、ほかのボランティア団体が受け入れてない看取りの犬も「クロの生まれ変わりかも」と保護している。亡くなる最期に、幸せを感じてほしいというのが一番の願いだ。
今年は、保護犬たちの母親的存在として、接する時間をより多く持ちたいという。「あの時出会い、救えなかった命に『私がんばったよ』といえるようになりたい。こんな人に保護されたいと思われるような人物になりたい」と橋本さん。そして「日本の動物たちのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることができるよう、来年も、いつまでも、奮闘していたい」と。

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