▼ひと【NO.2】
名張厚生協会の理事長 増井明さん

■春の叙勲で瑞宝単光章
2年前から名張厚生協会の理事長に就任。伊賀市木興町の自宅から名張市に通勤して38年目になる。
昭和28年、大阪の生まれ。地元の工業高校から京都市の花園大学に入り社会福祉を学んだ。卒業後、尼崎市役所に就職したが退職。印刷会社を経て40歳を超えた78年、大阪府四条畷市内の特別養護老人ホームの職員になった。これが地域福祉への第1歩となる。3年後の81年、妻の実家である旧上野市に転居。社会福祉法人名張厚生協会の職員となり、名張特別養護老人ホームの指導員にもなった。
主な仕事は相談業務。当時は廊下のいすに座り、何もせずに日々を過ごしている高齢者が多かった。そこで旅行クラブを立ち上げ、入所者と少ない金額ながら、旅行費用を積み立てた。年に1度の楽しみ。岐阜市の長良川の鵜飼や温泉など、バス旅行は喜ばれた。
「内職をしたい」という相談を受け、業者探しをしたこともある。綿棒を袋詰めする仕事だが、寝食を忘れて取り組む利用者もいた。
30代半ばで特別養護老人ホームへ異動した増井さんだが、そのころ入所していた高齢者夫婦のことが今も忘れられない。大晦日、夫が施設で死亡。妻は「自宅で葬儀をしたい」と申し出た。しかし、自宅は長期にわたる空き家で、電気、ガス、水道が止まり使えなかった。にもかかわらず「私のことはどうでもよいが、主人だけは自宅で葬儀をさせてあげたい」と強い要望があった。そこで、関係者に理解を求め1月4日、自宅で葬儀を営んだ。「おおきに」と感謝してくれた妻の言葉がうれしかった。
2007年から施設長を務める。入所者が「自分の思いで生活できる」施設を目指し工夫を重ねた。今回の受賞は「入所のお年寄りに育てていただいたおかげ」と感謝し、若い人には「福祉はとてもやりがいのある仕事だと知ってほしい」とエール。そして「これからも、社会の役に立てることを続けたい」と。

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